疾患コラム
今回と次回は糖尿病についてお話します。徳島県は長らく糖尿病死亡率1位を記録し、糖尿病患者さんが多いことで知られています。日本全体でも糖尿病は増加しており、2010年には2300万人(成人の18%)が糖尿病あるいはその予備軍になるといわれています。また最近、軽症糖尿病や糖尿病予備軍でも食後の血糖上昇が動脈硬化を促進し、脳卒中や心筋梗塞をひきおこすことが問題となっています。今回は糖尿病の成因、症状、診断についてお話します。
糖尿病について(1)
糖尿病の成因とタイプ
糖尿病は、膵臓から出る「インスリン」というホルモンの作用が不足して起こります。インスリンは血液中のブドウ糖を全身の細胞に取り込む役割をするホルモンです。インスリンの作用については「インスリンの量」と、「インスリンの働き」の2つの要素からなっています。膵臓から分泌されるインスリンの量が少ない場合や、インスリンが分泌されても働きが悪い場合(インスリン抵抗性)には両方とも、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれにくくなり、血糖値が上昇し、糖尿病となります。 糖尿病には1型と2型の2つのタイプがあります。
1型糖尿病:
膵臓のインスリンを作るβ細胞がウイルスや自己免疫で壊されて、インスリンの分泌ができなくなっておこるタイプで子供に多くみられますが成人でも起こる場合があります。インスリンを注射で補う治療が必要です。
2型糖尿病:
日本人の成人の糖尿病の約95%がこのタイプです。膵臓から分泌されるインスリンの量が少なかったり、働きが悪いために起こります。糖尿病になりやすい遺伝的な体質を持っている人に、環境的な要因(食べすぎや運動不足、肥満、喫煙などの生活習慣)が加わって起こります。治療はまず生活習慣を改善することが大切です。
糖尿病の症状
糖尿病の初期には特に自覚症状はありません。自覚症状がでるのはかなり悪くなってからです。のどの渇き、水分をたくさん取るようになり、尿の量や回数が増えます。さらに進行すると体重が減少し、合併症(網膜症、腎症、神経症)が起こってきます。最後には血糖の上昇のため昏睡になります。
しかしこのような症状は初期の糖尿病では現れず、まったく無症状で進行します。ですから健診などの検査で早く糖尿病を発見することが大切になってきます。定期的に健康診断を受けましょう。
糖尿病の診断
糖尿病の診断は75gOGTTという検査をおこないます。空腹時に75gの糖分の入ったジュースを飲み、その後30分ごとに血糖を調べる検査です。結果で下記のように診断します。
糖尿病の診断表 糖尿病と診断されるのは
○ 再検査でも糖尿病型のとき
○ 糖尿病型で次のいずれかに当てはまるとき
口渇、多飲、多尿、体重減少など糖尿病の典型的な症状がある。
HbA1cが6.5%以上
糖尿病網膜症がある
場合です。
また75gOGTTで正常にも糖尿病型にも属さない場合は境界型と診断されます。境界型は糖尿病の予備軍として注意を要する状態で、動脈硬化の進展がおこりやすいといわれています。この時期に生活習慣をしっかり改善することが大切です。最近はメタボリックシンドロームとの関係もよくいわれています。
特定健診も行われていますので年1回は健診を受けて、血糖値やHbA1cをチェックしましょう。
次回は糖尿病の合併症や治療についてお話します。