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今年より、住民健診に変わり、特定健診が始まります。特定健診はメタボリックシンドロームの予防を目的に行われます。今回のコラムはメタボリックシンドロームについてお話します。

メタボリックシンドロームについて

<メタボリックシンドロームとは>

 日本人の3大死因である「ガン」「脳卒中」「心臓病」のうち「脳卒中」「心臓病」を引き起こす原因は「動脈硬化」であるといわれています。
 動脈硬化を引き起こす原因として「高血圧」や「高脂血症」、「糖尿病」などの生活習慣病が問題となっています。特に内臓脂肪がたまると高血圧や糖尿病、高脂血症などの症状が一度に複数出やすくなります。そしてこのような場合、それぞれの病気の程度は“軽症“や”予備群“であっても動脈硬化が急速にすすむことがわかってきています。
 このように内臓脂肪の蓄積により、高血圧や糖尿病、高脂血症などの症状が複数出る状態を「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」といいます。現在では、40−74歳の男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドロームとその予備群といわれています。
 メタボリックシンドロームはたとえ症状がなくても放置しておくと心筋梗塞や脳卒中になる確率を何倍にも高めます。たとえば、肥満、高血糖、高血圧、高脂血の4つの危険因子をまったく持たない人と比べ、危険因子を1つでも持つ人が心臓病(冠動脈疾患)を発症するリスクは5倍、危険因子を3つ以上持つ人のリスクは約36倍にもはね上がるという調査結果もあります。
 最近、おなかまわりが太ってきた人は、「たかがおなかポッコリ」とあなどらず、メタボリックシンドロームでないか注意してください。もしメタボリックシンドロームだとしたら、命に関わる疾患に向かって、すでに助走を始めている状態なのです。

<メタボリックシンドロームの診断基準>

 メタボリックシンドロームの診断基準はお臍の位置でのウエストサイズ(腹囲)が男性85cm以上、女性90cm以上または、BMI(BMI=「体重(kg)」÷「身長(m)の2乗」)が25以上を基準として
  1. 中性脂肪150mg/dl以上かつ/またはHDLコレステロール40mg/dl未満、
  2. 収縮期血圧130mmHg以上かつ/または拡張期血圧85mmHg以上、
  3. 空腹時血糖110mg/dl以上
の3項目のうち2つ以上があてはまればメタボリックシンドロームと診断されます。
 特定健診ではさらに上記の3項目のうち1つ該当すれば、予備軍として特定保険指導の対象となります。

<メタボリックシンドロームの治療>

 メタボリックシンドロームの治療では、蓄積した内臓脂肪を減らすことが最も大切です。食べ過ぎや運動不足で摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余分なエネルギーは脂肪として蓄積されます。
 内臓脂肪を減らすためにはライフスタイルを見直し、食生活の改善や適度な運動など生活習慣を改善することが大切です。まずは運動習慣の徹底と食生活の改善で、消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスをとり、内臓脂肪を減少させましょう。さらにたばこは動脈硬化を促進させ心臓病のリスクを何倍にも高めます。禁煙するようにしましょう。
 さて運動のポイントですが有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせます。有酸素運動としてはウォーキング、サイクリング、水泳など自分にあったものを行ってください。とくにウォーキングはいつでもどこでも行うことができます。1日1万歩をめざして日常生活における歩数を増やすことが大事です。歩数計を使って10分歩くと1000歩など自分の歩く速度をはかったり、1日の歩数をチェックしてみてください。また1週間に2回程度エアロビクスや球技などやや強い運動を40分くらいするとさらに効果的です。筋力トレーニングとしてはスクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操など自宅で行えるものがお勧めです。筋肉が増えると基礎代謝量を増加させ、効率よくエネルギーを消費できるようになり、脂肪がつきにくい体になります。
 次に食事療法のポイントですが自分に必要な栄養量(総摂取カロリー)を知ることが大切です。総摂取カロリーの目安は、標準体重×25〜30kcalで計算します。身長165cmの人の場合、標準体重は1.65×1.65×22で約60kgとなり、1日の適正な総摂取カロリーは60kg×25〜30kcalで1500〜1800kcalとなります。必要なカロリーがわかれば次は栄養のバランスを考えてください。ご飯、パンなどの主食、肉、魚などの主菜、野菜、きのこ、海草などの副菜、乳製品、果物をまんべんなくとるようにしましょう。さらに塩分、脂質のとり過ぎに注意してください。甘いものは控えめに、アルコールは適量を守りましょう。食事は1日3食、規則的に、ゆっくりよくかんで食べてください。外食も副菜の多い定食を選ぶなど工夫してください。
 以上を理解して現在のライフスタイル全般を見直してください。つい車を利用してしまう、ファーストフードが多い、休日はゴロゴロしている、深夜まで起きて睡眠不足などメタボリックシンドロームにつながる生活習慣の改善に取り組んでください。そして継続することが大事です。まずは目標体重を決めて、体重日記をつけてください。
 最後に血圧や血糖については適切な薬が必要な場合があります。腹囲やBMIがメタボリックシンドロームの診断基準にあてはまる方は運動や食事療法を行う前に健診などで検査をして医師の指示にしたがってください。
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